研究概要 |
以下に述べる4つのテーマを中心に研究を行った. 1.量子分散計算に関する研究として,複数の量子計算機が量子ネットワークで接続されている状況を考え,特定の関数を計算する際に必要な通信量を評価した.結果として,必要となる通信量の上下限を示し,量子計算の優位性を示した. 2.分散計算環境向けの量子計算機シミュレータの開発を行った.分散計算環境下では通信時のオーバーヘッドがボトルネックとなるため,通信量を削減することで高速化を行うことができる.本研究では,処理すべきデータのノードに対する割り当てを工夫することにより,通信量を削減する手法を提案した,また,様々な例について通信量の見積もりを行い,提案手法の有効性を確認した.さらに,シミュレーション環境の枠組みを開発し,様々な計算機環境や計算手法を組み合わせてシミュレーションを行うことを可能にした.また,この枠組みではシミュレーションの手順を最適化し,高速なシミュレーションを可能にしている. 3.量子計算モデルとして量子プッシュダウンオートマトンに着目し,その能力の解析を行った.結果として,量子モデルが古典モデルよりも能力が低くなる場合があることを示した.一般的には量子計算モデルは古典計算モデルよりも能力が高いと考えられているが,本結果は特定の状況下で量子計算の能力が弱くなるということを示しているという意味で重要である. 4.線上の量子ウォークの解析を行い,結果としてclosed formで量子ウォークの振る舞いを記述した.
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