研究概要 |
記憶媒体の低価格化やネットワークの高速化を背景として,計算機可読なデータ(文字列データ)が爆発的な速度で増加している.本研究では,パラメタ化文字列照合問題とその関連問題を高速に解くアルゴリズムの開発を行った.文字列pを文字列sに変換する文字の一対一写像が存在するとき,文字列pとsはパラメタ化合致するという.パラメタ化文字列照合問題とは,パタン文字列pとテキスト文字列tが与えられたとき,pがt中でパラメタ化合致する位置の集合を求める問題である.高速なパラメタ化文字列照合技法によって,ソフトウェアメンテナンスや盗作検出,RNAの2次構造照合などの効率化が期待できる. 本年度は,パラメタ化照合問題と文字列中の回文構造が,密接な関係を持つことを解明した.具体的には,アルファベットサイズが3以下のとき,文字列pとsがパラメタ化合致することと,文字列pとsの回文構造が一致することが同値であることを示した.このことにより,アルファベットサイズが小さいときに,回文構造照合問題は線形時間で解けることが明らかになった.さらに,アルファベットサイズが4以上のときの回文構造照合問題にも取り組んだ.まず,文字列中の回文構造が持つ組み合わせ的性質を解き明かすため,与えられた回文構造を有する文字列を推定する逆問題に取り組み,線形時間でこれを解くアルゴリズムを提案した.この研究を通じて得られた知見を活用して,回文構造照合問題を解くアルゴリズムを開発した.任意のアルファベットサイズに対して,提案アルゴリズムが線形時間で動作することを明らかにした.
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