研究概要 |
23年度の研究実績としては,22年度までに本研究で作成した辞書をソフトウェア開発に役立てるシステムを検討および実現した.具体的には,22年度までに作成した辞書である,動詞-目的語関係の辞書と,名詞の説明文を収録した辞書とを,新規に作成する識別子の命名支援に利用した. オブジェクト指向プログラムの開発中に新しいメソッドを作成する際には,そのメソッドに適切な名前を与える必要がある.しかし,適切な名前を与えるためには幅広いプログラミングにおける知識とともに,そのメソッドが属する分野の知識が必要となる.しかし,個々の開発者がプログラミングにおけるありとあらゆる分野に精通するのは不可能である.そのため,メソッドに適切な名前を与える作業は,該当分野に精通した限られた開発者にしか行えない難しい作業であった. そこで,前述の辞書を用いて,開発者に対して良いメソッド名の候補を提示するシステムを作成した.システムは,まず,新たに作成しようとしているメソッドの周囲の文脈,すなわち前後や上位に存在するプログラム要素を収集する.そして,収集したプログラム要素に出現する単語を用いて,動詞-目的語関係の辞書を検索し,見付かった動詞-目的語の組からメソッド名の候補を作成し,開発者に提示する.このシステムを用いることにより,必ずしも該当分野に精通していない開発者に対しても,適切な命名を促すことができる. このシステムについて,電子情報通信学会ソフトウェアサイエンス研究会2012年3月研究集会において発表を行なった.
|