研究概要 |
本研究では、高品質な組込みソフトウェアを開発するために,非正常系と呼ばれる例外や障害などの事象に注目して,情報の流れに着目した情報フロー・ダイアダラム(IFD)を摘用した静的な要求分析手法および状態遷移に着目した分析マトリクスを適用した動的な要求分析手法の2種類を統合した非正常系分析手法を提案している.本年度は、IFDおよび分析マトリクスの統合モデルの定式化,抽象化メカニズムの明確化,およびこれらを利用した推論方式について研究した.定式化では,組込みシステムの非正常系分析に必要な概念を概念モデルとして規定し,IFDの構成要素であるプロセスやデバイスを集合として定義,また,分析マトリクスの状態やイベントを関数の結合により表現した.これらの規定により,これまで不明確であったダイアグラム間の概念の対応関係が明らかとたった.また,熟練技術者が分析時に使用している3種類の抽象化概念、つまり、(1)複数のデバイスを1つのデバイスとみなす構成要素の抽象化,(2)複合的な状態を1つの状態とみなす状態の抽象化,(3)複数のプロセスを1つのフローとみなすフロー系列の抽象化,を関数として規定することにより,概念をより明確にした.さらに,熟練技術者の思考方法を分析し,分析過程における定性的な4種類の性質を抽出した.この4種類の性質を制約条件と性質関数として規定し,定性的に推論することにより,非正常系の分析過程において,IFD分析マトリクスの協調作業が可能となる.本年度は,既存の事例に対して定性推論によりIFDと分析マトリクス間の解釈が可能であることを確認した.今後は,定性推論を障害シナリオ抽出に適用できるように拡張し,手法の有効性を検証する必要がある.
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