研究課題
本研究では、高品質な組込みソフトウェアを開発するために、非正常系と呼ばれる例外や障害などの事象に注目して、情報の流れに着目した情報フロー・ダイアグラム(IFD)による静的な要求分析手法、および状態遷移に着目した分析マトリクスによる動的な要求分析手法を統合した非正常系分析手法を提案している。本年度は、分析マトリクスの概念と障害シナリオの導出過程を明確化することにより、統合モデルと分析プロセスを洗練し、支援ツールに必要な機能を検討した。具体的には、分析マトリクスにおける構成要素、状態、イベント、シナリオ等の概念と熟練技術者の思考とを対応づけることにより概念を詳細化した。たとえば、熟練技術者の考えている構成要素は、分析ごとに範囲が異なっている。そこで、構成要素を各々1つの状態機械とし、各構成要素の持つ属性を内部もしくは1つの外部構成要素に影響する局所的属性と、複数の外部構成要素に影響を及ぼす大域的属性の2種類に分類した。これにより、構成要素間の関係を分析する場合、分析範囲を大域的属性のみに限定できた。また、属性の分析単位を限定することにより分析範囲を制限した。たとえば、センサーは連続的に特定の構成要素にデータを送信しているが、分析時はある閾値を超えたときの変化で判断しており、同値分割法を用いることによりイベントを限定した。ただし、非正常系となる特別な状況、たとえば、故障等により入力が変化しても出力が変化してない場合は入出力関係の矛盾という特別なイベントを発生し、非正常系として分析出来るようにした。このような概念を統合モデルおよび分析プロセスに反映させた。また、熟練設計者は、分析マトリクスの1つの状態遷移を、暗黙のうちに複数のIFDと対応させていることが分かった。このような技術者のレベルによる分析マトリクスの違いを補完する仕組みの導入が重要とある。
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電子情報通信学会信学技報
巻: Vol.110, No.468 ページ: 19-24