研究概要 |
本研究では,時間変化する確率的システムをモデル化し,シミュレーションや性質の推論・検証を行うための高水準な制約プログラミング言語とその処理系を構築する.初年度である平成21年度には,時間変化する確率的システムをモデル化するための制約プログラミングに関する基礎検討を行った.そのための枠組みとして本研究では確率的並行制約プログラミングを採用したが,従来の枠組みにはGuptaらとDiPierroらによって提案された2つのものがあるため,本研究ではそれらの詳細な比較を行った上で,これらに不足している言語機構等を考察し,構築すべき確率的並行制約プログラミング言語の方向性を検討した.また本研究では,確率を扱う制約プログラミングの基盤として,Bistarelliによって提案された半環に基づく制約充足問題に注目し,その性質を調べた.この問題では,加法と乗法からなる基本的な数理構造である半環を用い,乗法によって制約の結合を,加法によって解の最適化を表現することで制約解消の過程を抽象化しており,これによって確率的制約充足問題を扱うことが可能である.本研究では特に半環に基づく制約充足問題において,制約に階層的な優先度を与えた場合の性質を調べた.その結果,非階層的な場合に制約充足問題を表現できる半環であっても,その演算を階層的に組み合わせると半環ではなくなる場合があることを明らかにし,さらに階層的に組み合わせることが可能な半環についての十分条件を与えた.
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