研究概要 |
本研究の目的は,確率的システムをモデル化し,シミュレーションや性質の推論・検証を行うための高水準な制約プログラミング言語とその処理系を構築することである.平成23年度には,以下の2つの研究を行った.(1)確率的システムをモデル化するための枠組みとして,確率的制約充足問題を定式化した.本枠組みでは,個々の制約に対して確率を割り当てることで,制約の柔らかさを表現することができる.本枠組みは,FargierとLangの枠組みを基礎とするものであるが,従来のように制約充足問題の部分問題に対して存在確率を定めるだけではなく,新たに個々の解に対しても存在確率を定めるようにしており,これによって確率的制約充足問題としての意味付けがより直観的になっているという特徴がある.また,本研究では,個々の解の存在確率を推定することを可能にするために,統計的手法であるマルコフ連鎖モンテカルロ法を用いる方法を構築した.(2)優先度を伴った線形制約からなる制約充足問題を処理するための手法を構築した.本手法では,個々の制約に対して階層的な優先度を割り当てることで,制約の柔らかさを表現することができる.これは,本研究課題で平成21年度に検討した,半環に基づく制約充足問題において制約に階層的な優先度を与えた場合に相当する枠組みを用いたものである.本研究では,特に線形制約を対象として効率的な制約処理手法を構築し,さらに制約解消系として本手法を実装した.
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