研究概要 |
1.高性能・高信頼多値集積回路設計技術の検討 集積回路の高性能化を実現するアプローチの一つとして多値集積回路の研究は進められてきたが,現在までの多値集積回路に関する研究は主に多値論理・多値演算を実現するための回路構成に関するものがほとんどであり,回路動作の保証という観点では深い検討が行われていなかった.本年度研究では,デバイスのばらつきや動作環境の変化に応じて適応的なパラメータ調整を施し,性能劣化を補償することが可能な多値集積回路アーキテクチャの構成について検討を行った. 2.不揮発性デバイスを用いた多値回路ブロックの原理検証 MTJ (Magnetic Tunnel Junction :トンネル磁気抵抗)素子と呼ばれるデバイスを組み込んだ多値回路ブロック,およびデバイスのパラメータ制御によるばらつき制御手法について検討した.MTJ素子はCMOSプロセスとの高い親和性を有する不揮発性新デバイスであり,一定値以上の電流を流すことで,磁化の状態に対応した2種類の抵抗値を取る.本素子を回路に組み込むことで,CMOSプロセスが有するばらつきを補正する機能を付加し,設計段階における動作マージンの制約を緩めると同時に,ばらつきによる性能劣化を抑え,結果として高い性能の実現が可能となる.本年度研究では本方式が有する原理的な性能限界とその最適性能を与える具体的な条件・調整方法について,数式的な評価および回路シミュレーションを通した検討を行い,その有効性を示した.
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