環境問題の要因・動態解析などを目的とした環境モニタリングへの利用が期待されている屋外設置型無線センサネットワークにおいて、制御不能な自然環境に起因する外乱と共生可能な環境適応的無線センサネットワークの実現を目指したもので、センサノードに持たせた環境モニタリングのためのセンサデバイスの計測データから周囲の通信環境を推測・学習し、センサノード間の通信制御に活用することによる通信効率及びネットワーク稼働時間の向上技術の開発と、東京農工大学が保有する演習林における実践的評価を目的としている。 平成21年度は、実環境における通信環境モニタリングの基礎データ収集を行うシステムの開発および通信環境の状況を通信制御に活用することの有効性を示すためのシミュレーション実験を実施した。具体的には、雷などの自然環境に起因するノードのダウン率が高い環境を想定し、データをシンクノードに集約するセンサネットワークにおいてシンクノードの故障や電力不足により多くのデータが失われることに着目した。このような状況下で、データの損失防止と消費電力量の低減の両方を備えた通信制御方式を開発した。提案方式の特徴は(1)複数のセンサデバイスが搭載されたセンサノードを対象に、デバイス別に2ホップ以内に存在するセンサノードに通信環境の状況を考慮しながらデータを保存、(2)保存方式に適したクエリおよびセンシングデータの収集方式による電力消費量増加の抑制である。提案方式により、データの収集率を2脇向上し、電力消費量の増加を0.1%程度に掬えることができた。これにより、通信状況を考慮した通信制御の有効性が示唆されたと言える。 今後は、平成21年度で得られた成果を踏まえ、演習林において通信環境の計測を実施し、得られた結果を開発した方式に反映させることで提案方式の有効性を示していく。
|