環境問題の要因・動態解析などを目的とした環境モニタリングへの利用が期待されている屋外設置型無線センサネットワークにおいて、制御不能な自然環境に起因する外乱と共生可能な環境適応的無線センサネットワークの実現を目指したもので、センサノードに持たせた環境モニタリングのためのセンサデバイスの計測データから周囲の通信環境を推測・学習し、センサノード間の通信制御に活用することによる通信効率及びネットワーク稼働時間の向上技術の開発と、東京農工大学が保有する演習林における実践的評価を目的としている。 平成22年度は、平成21年度に開発した実環境における通信環境モニタリングの基礎データ収集を行うシステムを利用した評価実験を実施した。具体的には、本学が所有する多摩丘陵に当該システムを設置・運用し、設置環境情報として温度、湿度、気圧を、通信品質として通信帯域を一定期間取得した。運用期間中の天候変化は著しく、本研究の前提条件である湿度変化が通信品質に与える影響を顕著に観察可能な期間である。取得した結果を解析し、通信帯域の最大値と最小値に16倍の差があること、期間中の通信湿度と通信帯域が相関係数-0.282~-0.299程度の相関関係にあることを示した。この結果から、通信環鏡を考慮した無線通信制御は有意であると言える。また、得られた結果を考慮した通信制御方式の設計および基礎データ収集システムの改良を実施した。 今後は、改良した基礎データ収集システムの長期運用と設計した無線センサノードの実装および実環境への適用を行い、提案方式の有効性を示していく。
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