環境問題の要因・動態解析などを目的とした環境モニタリングへの利用が期待されている屋外設置型無線センサネットワークにおいて、制御不能な自然環境に起因する外乱と共生可能な環境適応的無線センサネットワークの実現を目指したもので、センサノードに持たせた環境モニタリングのためのセンサデバイスの計測データから周囲の通信環境を推測・学習し、センサノード間の通信制御に活用することによる通信効率及びネットワーク稼働時間の向上技術の開発と、東京農工大学が保有する演習林における実践的評価を目的としている。 平成23年度は、前年度までに開発・運用を進めた通信環境計測用無線センサノードの台数を3台に増加させ、15メートル間隔の2組のノード間および30メートル間隔の1組のノード間の通信効率を計測した。計測は、本学が所有する多摩丘陵を利用し、2011年5月から2012年4月現在まで継続的に実施している。まず、基本的な成果として、15メートル間隔のノード2組は同様の電波減衰傾向を示し、かつ前年度の同様の期間に実施した電波減衰傾向との類似、30メートル間隔のノード1組が15メートルの組と異なる電波減衰傾向を示していることが分かった。さらに、通信効率変動の不安定・安定期間の存在、電波減衰傾向は同じだが距離の長い方が高い通信効率を示す場合があること、機器転倒などの障害で地面と機器の距離が狭まると極端に電波減衰するなど、様々な事象を確認した。また、電波減衰の傾向と、受信側の受信信号強度変化傾向の類似性も確認している。 これらの結果を踏まえて、RSSI値と通信帯域の関連付け方式、省電力性を考慮した周囲ノードとの通信環境を考慮した関係性把握、シンクノードへのRSSIなどの通信環境に関する情報集約・解析によるセンサノードへの情報フィードバックを特徴とする通信制御方式を設計した。また、距離を考慮した電波伝搬損失モデルへの環境要因の適用可能性を示した。
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