研究概要 |
今年度はまず,提案するオポチュニスティック型パケット送信を併用したクロスレイヤプロトコルを一般的なランダムトポロジーに対応できるようプロトコル拡張を行った.具体的には,本来の通信相手への送信エラー発生時に,代理送信する周辺ノード候補のうち,実際にパケット転送できるノードのみを候補とすることで,転送失敗確率を低下させる手法へと拡張した.次に,提案手法のスループット,エラー率,遅延性能等を計算機シミュレーションにより評価した.評価に際しては,ノードの移動性を考慮し,無線通信のエラー率等をより現実的にモデル化するためにESPARアンテナを用いた実機実験を行い,実験結果をシミュレーションパラメータに反映させた.評価結果より,提案プロトコルにおいて,送信エラーの発生時に周辺ノードによる代理データ送信が有効にエラー回復できる条件を明らかにした.具体的には,交差点のように複数のトラフィックフローが1ノードで交差するようなトポロジーにおいて,比較的高負荷時に最大で60パーセント程度スループット性能を改善でき,高いエラーレジリエンシー性能を実現できることを明らかにした.また,本手法の環境発電ノードへの適用や,マルチレート環境への対応,データ集約の適用可能性を検討した.本研究は,信頼性の高い自律分散型無線ネットワークの実現において,オポチュニスティック型通信の適用方法や適用領域を明らかにしたという点で意義深いものと考えられる.
|