本年度では、短い時間変動に追随してトラヒックエンジニアリングを行うことを目標とした手法の確立を行った。トラヒックエンジニアリングでは経路設計を行うサーバが、ネットワーク内の機器からトラヒック情報を収集、収集したトラヒックに適した経路の設計を行う。しかしながら、短い時間変動に追随してトラヒックエンジニアリングを行うために必要となるトラヒック情報を単一のサーバにおいて頻繁に収集することは困難である。 そこで、本年度においては、ネットワークを地理的に分割、階層化を行い、頻繁に行うことが可能な局所的な範囲の情報を用いた局所的な制御(下位層)と、長い周期で行う広い範囲の情報を用いた広い範囲の制御(上位層)を組み合わせることにより、トラヒック変動発生後、すばやく、適切な経路設計に移行する手法を提案した。また、地理的に分割、階層化した環境において、上位層・下位層間で交換するトラヒック情報を集約する手法、集約したトラヒック情報を用いて経路変更を行う手法を合わせて提案した。 シミュレーションにより、提案手法が、局所的な制御を取り入れることにより、すばやく輻輳を回避できることを示した。また、トラヒック情報を集約することにより、より広い範囲の制御を行う上位層においても、収集が必要可能なトラヒック情報のエントリ数を小さく抑えることができることを示した。さらに、提案手法が、ネットワーク全体め情報を用いて経路設計した場合と同程度まで最大リンク使用率を削減できることを示した。
|