研究概要 |
本研究では、無線ネットワークにおけるモビリティの影響を適切に評価できるよう、ユーザ密度分布や滞留時間分布など、個々のユーザ移動から生じ、ユーザ全体もしくはユーザの一部を対象として観測できるような移動特性に着目し、それらを任意の状態に誘導するモビリティモデルの確立を目指す。今年度は,様々なユーザ密度分布において性能評価を行えるよう、前年度に提案したモビリティモデルを発展させ、任意のユーザ密度分布を実現するだけでなく、ユーザ密度分布に関する定常状態を維持する条件を明らかにした。提案手法では、地点間を移動するユーザの数をユーザ全体で調整することにより、指定されたユーザ密度分布を実現する。地点間で移動するユーザ数を決定する問題を非線形計画問題として定式化し、定常状態を維持できるユーザ数の条件だけでなく、定常状態を実現できるような初期状態を明らかにした。また、非線形計画問題を効率的に解くために、SAアルゴリズムを適応し、指定されたユーザ密度分布を実現するモビリティモデルを高速に導出できることを示した。さらに、その解法を拡張し、ユーザ密度分布だけでなく、ユーザ移動のランダム性やグループ性などいくつかの移動特性に関する制約を満たすモビリティモデルを導出できることを示した。これらの研究成果の一部を情報処理学会第56回モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL)研究会で発表し、優秀論文賞を受賞した。
|