研究概要 |
本研究の目的は,次世代暗号であるペアリング暗号の,センサノードへの効率的なアセンブリ実装法を確立することである.平成23年度は,(1)センサノードへのペアリング暗号実装に適したpairing-friendly曲線の係数の決定に関する研究,(2)Vandermonde行列乗算法に基づく効率的なアセンブリ実装の分析,(3)応用技術としてペアリング暗号に基づくタイムスタンプ署名手法の提案,を行った. (1)について:Barreto-Naehrig(BN)曲線は,埋込み次数12を持つpairing-friendly曲線であるが,従来の構成法には確率的要素が含まれていた.本研究では,立方剰余性を言及するEuler予想,Gaussの定理,楕円曲線のツイストの性質から,この確率的要素を削除出来ることを示し確定的なBN曲線の構成が可能となった.さらに,この手法を他の埋め込み次数が4,6,8のpairing-friendly曲線にも適用した. (2)について:ペアリング計算の高速化のために提案されたVandermonde行列乗算法は部分体乗算数を削減できるが,センサノード上でのペアリング実装には期待された程の実装結果は得られなかった.その理由を分析した結果,センサノードの小ワード性,メモリアクセスの相対的高速性,シフト処理の相対的低速性があることが判明した. (3)について:通信データの送信者と生成時刻の認証に使用されるタイムスタンプ署名を,ペアリング暗号に基づき,時刻情報によって署名検証し署名生成時刻を保証するタイムスタンプ署名の提案を行った.
|