研究概要 |
本研究は,これまで検討してきた「近接作用に基づく自律分散制御」をアドホックネットワークに適用し,局所情報に基づくノードの自律動作によって,ネットワーク全体を間接的に望ましい方向に導くネットワークリソース管理技術を実現することを目的としている.研究実施計画(課題1~課題3)に対し,達成した内容は以下の通りである. (課題1)ネットワークの離合集散によるクラスタ秩序の破壊に関する問題 ネットワークの離合集散によりクラスタ構造の秩序が破壊される問題に対して,クラスタ構造の漸近安定性を解決する大域的操作方法を2つ考察し,それらの評価を行った.一つ目の増幅操作の導入によって空間構造分布の漸近安定性を確保するアプローチでは,増幅率が理想値から僅かでもずれると,空間構造分布の振幅の変化に指数関数的な影響を与えるという特性があったため,現実のネットワークでの実現が難しいことがわかった.一方,空間構造分布の履歴を保持するアプローチでは,注目するベクトルの成分を変更することでクラスタサイズやクラスタ数を制御することができ,分布の振幅の安定を保証することがわかった. (課題2)ネットワークモデルの単純化による問題 これまでの評価モデルは,端末は動かず,二次元格子状ネットワークモデルのような限定したモデルを想定していたが,端末の移動を考慮し,ユニットグラフを使ったより複雑なネットワークモデルを使って,提案手法の効果を評価し,その有効性を確認した. (課題3)ネットワーク性能の評価 評価指標を具体的に端末のバッテリー残量とし,提案手法において構成したクラスタについて,クラスタ構成時におけるFND時間(First Node Die時間:ネットワーク内で最初にノードが使用不可能になるまでの時間)と,ノードの生存率の時間変化について評価を行った.その結果,提案手法が既存方式よりも優れていることが分かった.
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