研究概要 |
本研究では,無線メッシュ網の移動端末が両端で同時にハンドオフする双方向ハンドオフを高速に実現する手法として,各AP間を結ぶ複数個の経路木をVLANにより予め静的に設定し,端末移動の際にはこれらの中で随時最適な木を選択して切り替える手法を提案した.VLANは一般に,同時設定可能なID数が限られるため設定する経路木も可能な限り少なく抑える必要がある.これを実現する木の構築方法として,網内でパケット中継に使われる頻度が高くハブ的な役割を果たすと想定されるノードを仮想トランクノード(以下VN)と呼ばれる手法でk個(kはパラメータ)選出し,これらを接続する手法を用いる.ハンドオフ時の木の選択方法として以下の2方式を評価した.方式1:VN間をMST(最小全域木)で接続した木を事前に何本か設定し,その中から.両端の移動端末のいずれかとの距離が最も近い木を選択する.方式2:k個のVNの各々を始点とするSPT(最短経路木)を事前に設定し,両端の移動端末のいずれかから始点が最も近い木を選択して使用する.シミュレーションによる性能評価の結果,端末間のホップ数の点で方式2の方が優れていることが明らかとなった.方式2についてはパラメータkの値を大きくすれば単純に網内の全てのSPTを使用する手法に近づくことになり,性能と使用する経路木の数の間でトレードオフが存在するが,ノード数が実用的な無線メッシュで想定しうる最大値に近い30の場合ではk=5とすれば十分な性能が得られることを明らかにした.
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