研究概要 |
本研究では,新たなコンピューティング環境として普及しつつあるクラウドコンピューティング環境(以下,クラウド環境と呼ぶ)を対象に,セキュリティとトレーサビリティを両立した肌データ流通機構の研究・開発を目的としている.2年間の研究期間の初年度に当たる今年は,セキュリティおよびトレーサビリティの基礎技術,XMLデータの各種処理手法に焦点を絞って研究を行った. セキュリティに関しては,クラウド環境においてアウトソースされたデータベースに対して機密を保護したまま問合せを行うための,プライバシー保護検索手法を開発した.従来のOrder-Preserving Encryption Scheme(OPES)を発展させ,データベースに対する問合せを可能にしつつセキュリティを向上したMulti-Valued OPES(MV-OPES)を提案した.MV-OPESにより,暗号化されたデータベースを利用して各種関係代数演算が処理可能となる.実験により,その提案手法の有効性を評価した. 一方,トレーサビリティについては,XMLデータに対してトレーサビリティ情報の付与を目的としたアノテーションのモデルを提案した.これは,任意のXMLデータに対して,XMLデータで記述したアノテーションを付与することを可能とするモデルである.アノテーションが付与されたXMLデータに対しては,拡張したXPath式によってアノテーションの特徴を利用した問合せ行うことができる.これらを一般のXMLデータベースを利用して実現するための格納構造と,問合せ変換について議論し,その有効性を実験によって評価した. XMLデータ処理については,近年普及しつつあるマルチコアCPUを利用したスケーラブルな問合せ処理アルゴリズムを開発した.Holistic Twig Join(HTJ)と呼ばれる問合せ処理アルゴリズムに着目し,これをオンラインで分割,各CPUコアに割り当てを行うことによって並列処理が可能となる. 得られた成果は,学術雑誌,国際会議,国内学会などで適宜発表し,成果の公表につとめた.
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