本研究課題では、複数のネットワークカメラから構成される監視システムを想定した、移動物体の自動抽出と自動追跡を行うシステムの実現を目的としている。具体的には、ネットワークカメラから配信されるMPEG動画像を圧縮領域で処理する技術の研究であり、固定カメラが配信する動画像情報を用いた移動物体の自動抽出や移動予測、パン・チルト・ズーム可能なPTZカメラのリアルタイム追跡制御の実現を目指している。当該年度では、カメラを用いたセンサーネットワーク構築技術に関する研究動向の調査、実験用機材の選定と導入、導入機材を用いた実験実施、監視システムを構築する際に必要となる要素技術の研究と開発と、研究成果の公表を行った。ネットワークカメラには、広域撮影機能とPTZ制御による追跡撮影機能の両者の特性を持つ機器を導入した。導入機材を用いて実験環境を構築し、研究を進めた結果、カメラワークに影響されない移動物体領域の抽出法と、リアルタイム制御などの高速映像処理に有用なノイズ的な動きベクトル除去法を開発した。移動物体領域の抽出では、グローバルモーションと履歴特性を持つ特徴画像を用いることで、PTZカメラのカメラワークに影響を受けない高速処理が可能な手法を実現した。ノイズ的な動きベクトルの除去では、既存の動き検知法をグローバルモーション推定に対応させることで、高速かつ汎用的な前処理手法を実現した。これらの研究成果について、MPEG動画像を用いた監視システム構築に必要な要素技術として公表した。
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