研究概要 |
本研究では,体験した風景に対する印象を静止画像や動画像として記録する画像処理・生成技術(「見たまんま写るんです」デジタルカメラ)の開発を目的としている.昨年度は,まず2次元平面において知覚される消失点に関する視覚心理実験をおこなった.その結果,これまで3次元空間で知覚される消失点のずれが,2次元平面でも起こっていることが明らかになった.ただし,ずれが起こる平行線の位置には異方性があり,壁面と床面,天井面では,それぞれずれ方に違いが見られた.また,消失点のずれの知覚には絵画的な奥行き手がかりと関連があることがわかった.次に,2次元平面において2つの直線がなす角度の知覚に関する視覚心理実験をおこなった.この2つの直線は,3次元空間における平行線が2次元平面に投影された像に対応している.この実験の結果,人は2つの直線に絵画的奥行き手がかりが付加されるほど2直線がなす角度を過小視することが明らかになった.しかも,消失点のずれの実験と同様に異方性があり,道路のようなイメージの2直線と,天井のようなイメージの2直線では,錯視量に有意差があった.このように,これまで明らかにしてきた3次元空間と2次元平面の知覚の違いのほかに,2次元平面においても,その絵画的奥行き手がかりによって一種の錯視が起こっていることがわかり,その規則性もある程度明らかになった.これらの2次元平面における消失点の位置と平行線知覚に関する知見が,研究実施計画の1つのテーマとしていた画像描画方法開発のための詳細な情報となった.
|