平成23年度は大量の画像集合に基づくオブジェクト認識システムの精度を向上させるため、画像の特徴量や意味的特性を表現する確率モデルに関する基礎的手法の研究を進めた。特に画像中に複数のオブジェクトが現れている場合、通常の手法では領域の推定が容易でない。これを解決するため、確率過程に基づく推定手法を行うための研究に取り組んだ。画像認識の第一段階として、オブジェクト領域と背景領域を分割するために判別分析等を用いて二値化が行われる。オブジェクトが複数の場合、領域を二つに分けるのでは十分でないため、適切な数の領域に分割することが重要となる。画像によって領域数が異なるため、データに応じて推定されることになるが、その推定量はハイパーパラメータの設定によって左右され、これの設定が課題となっている。従来の経験に基づく決め方ではなく、確率分布の分布に相当する確率過程をモデルの一部として用いることで、ハイパーパラメータがデータに基づいて設定され、領域数の適切な推定が可能になる。これによって実際のオブジェクト領域への分割精度が改善することが期待される。 また、形状とテクスチャに関する適切な特徴量の選択のための統計的手法の研究に取り組んだ。この分析に基づき、輪郭追跡と合わせて概形取得に使用できるシステムの研究を進めた。 これらの研究に際し、個別の課題に対するアドホックな実装ではなく、一般的な枠組みのもとでの問題解決を目指した。
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