本研究は、モーションデータベースと舞踊の古典作品の分析により、舞踊の群集シミュレーションを行うことを目的としている。本年度は、対象をバレエに限定し、ゲームパッドを用いた群舞シミュレーションシステムの改良と、バレエ古典作品の分析およびCG再現を行った。 1.前年度に試作した群舞シミュレーションシステムの改良を行った。本システムは、ゲームパッドを用いて仮想ステージ上にCGダンサーを配置することでシミュレーションを行うものである。まず、モーションキャプチャで取得したバレエの群舞用動作をシステムに導入し、配置だけでなく振付動作の選択や変更を可能にした。さらに、システムの新機能として、GUIを用いたタイムラインの対話的な編集や、複数の異なるフォーメーションへの配置などを追加した。システムの改良により、複雑なフォーメーションや、時間による振付動作の変更が可能になった。 2.バレエの著名な群舞シーンを再現するため、古典作品で使用される振付動作、フォーメーション、移動経路の分析を行った。対象は「白鳥の湖 第2幕 白鳥たちの登場」とし、3つの異なる公演の映像を分析した。さらに、分析結果をふまえて、不足している振付動作を新たにモーションキャプチャで収録し、フォーメーションや移動経路のパターンもシステムに追加した。 3.これまでの研究成果を評価するため、バレエ古典作品の群集シーンのCG再現を行った。まず、バレエで男女がペアで踊る「白鳥の湖 第3幕 黒鳥のパ・ド・ドゥ」について、音楽と衣装と背景付きで振付を3DCGで再現し、Webコンテンツとして公開した。次に、群舞シミュレーションシステムを用いて、「白鳥の湖 第2幕 白鳥たちの登場」の群舞シーンの再現を試みた。ダンサーの入場から約2分、57小節分について、振付動作、フォーメーション、移動経路がほぼ再現できることを確認した。
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