研究概要 |
われわれの知性を集約・活用できる協創メディアは情報通信技術(ICT)の大きな目標であり,知識基盤社会を支える科学技術として重要である.その代表システムとして,人々の問題解決や意思決定を支援する電子会議システムがある.電子会議システムの理想は参加者全員がもつ知識を活かした会議を実現することである(この参加者全員の知識を活かした状態を'グループ知'と名付ける). 平成21年度では,この理想を実現するために知識理論を取り入れた仮説プロセスを提案し,そのプロセスを支援できるシステムの設計・開発を行った.最初に,グループ知を実現する仮説プロセスを分析哲学者が提案する三種類の知識をもとに考案した。次に,我々が開発してきた分散協調型KJ法支援グループウェアKUSA NAGI上に提案プロセスを実装することを検討した.その提案を実現するために,個人で行う共同作業や,それら結果を統合して取り扱うために,既存会議データを追加して利用できる機能を実現した.その結果,十数台のクライアント計算機を用いて過去に行われた複数回分の結果を用いた分散協調型KJ法を行えるシステムを実現した,当初の研究目標では共同作業空間データの移動処理速度を1秒以内に収めることを目指したが,会議のデータ量が多い場合(テキストだけでなく,イメージを使用する時),目的とする性能は達成できない結果となった.一方,サーバで記録した共同作業のイベントログを使用することによって,共同作業に対する操作分析や共同作業への途中参加を実現可能とした.
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