研究概要 |
本年度は,情報の可聴化による視覚的認知資源制約の補償効果について調査した.目標達成のために複数の状態量への注意配分が求められる作業環境として,経内視鏡的関節軟骨評価のための超音波プローブの操作を模擬したタスク環境を構築した.このタスク環境を使用して,聴覚情報呈示の有効性を定量的に評価した.超音波プローブの操作には,検査対象の表面に対して垂直にプローブを向ける角度操作と,検査対象表面とプローブの距離を一定に保つ距離操作がある.正確な評価のためには両操作を高い水準で達成しなければならず,術者はそれぞれの状態についての情報を同時に処理しながらプローブを操作する必要がある.被験者実験の結果からは,視覚情報呈示と聴覚情報呈示のそれぞれがもつ特長や効果の違いを確認した.聴覚情報呈示には,音の強さが変化する方向によって,同じ強さの変化量であっても認識される変化の大きさに非対称性が存在する.一方,視覚情報呈示は大きさの基準を設けることが容易なため,情報が示す量の認識が聴覚情報呈示に比して正確である.これらの性質を作業の要件に適した形で組み合わせて活用することで,多数の視覚情報呈示に溢れる操作場面において,より効果的な操作支援のための情報呈示環境を設計することが可能となる.この点について,どのような種類の情報を可視化し,どのような種類の情報を可聴化するかに関する分類を議論するために,作業要件を形式に基づいて検討する作業に着手した.
|