【具体的内容】 フルカラー3次元プリンタから出力した実モデル上に、複数台のプロジェクタからその明暗差を強調するような映像を投影することで、デジタル化された文化財を色・形ともに高品位に出力するため、下記の3種の要素技術の研究を行った。(1)平成21年度に提案したプロジェクタの最適配置算出手法で算出した位置に実際にプロジェクタを手動で設置することが困難であることが分かった。そこで本年度に、視覚ガイドを投影しながら設置するユーザインタフェースを提案した。被験者実験を行い、視覚ガイド無しで設置した場合と比較して、視覚ガイドによってプロジェクタの位置ズレが距離ベースで33%改善され、提案手法の有効性が確認できた。(2)視覚ガイド有りの場合でもプロジェクタの設置位置のずれが存在したことから、最適配置算出手法の再考を行った。具体的には、ずれが起きたとしても画質が大きく変化しない設置場所を選ぶような項を最適化式に組み込んだ。(3)プロジェクタの画素サイズが大きい場合に、3次元プリンタ出力モデル上の模様が細かく変化している部分に映像を投影すると、色ずれが目立ってしまうという問題があったため、それを最小化するような色補正技術の研究を行った。これには、高解像度なカメラ(補助金で購入した1眼レフカメラ)を用いてプロジェクタの画素と3次元プリンタ出力モデルとの対応を高解像度に取得し、最適な投影色を算出した。 【意義・重要性】 平成22年度までに、研究課題を実現するための基本となる要素技術はほぼ完成していたが、本年度では「高品位」という研究課題の目的を追求する研究が行えた。それぞれの研究成果による画質改善は小さなものであるが、それらが組み合わさることで、画質が向上していることが視認できるほどであった。本年度提案した基盤技術はいずれも、特定の応用のみに使えるものではなく、他の投影型システムへの応用が大きく期待できる。
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