研究概要 |
平成21年度は,まず立体物に対する見えの制御を実現するにあたり,プロジェクタカメラ同軸光学系を試作した.試作した同軸光学系は透過率70%反射率30%のハーフミラーを用い,ハーフミラーを透過してシーンへ補正光を投影する.これと同時にシーンからの反射光をハーフミラーで反射した同軸上に設置されたカメラで撮影するものである.試作前に懸念していた投影光のハーフミラー上での写り込みについては,余剰光をハーフミラーから距離を離した光吸収シートにより処理することで実用上問題の無いレベルまで低減することができることが確認された. また,平成21年度はバウハウス大学(ドイツ)に赴き,プロジェクタカメラシステムを用いた拡張現実感技術において世界的に有名なJohn Kepler University, Linz (元Bauhaus University Weimar)のProf.Oliver Bimberにアドバイスを頂き,彩度やコントラストの強調のみならず任意の見かけの制御を行う方法論を確立した.具体的には,プロジエクタカメラ系の光学的な関係をモデル化して,モデル予測制御を用いることで,彩度,コントラストおよび色相の制御,色彩の除去,エッジ強調,ぼかし,明度の均一化などを自由に行う方法論を確立した.これらの成果により,複数のプロジエクタカメラシステムを協調させた立体物の全周囲に対する見えの制御を行うための環境が整った. また,見えの制御技術の確立と同軸光学系の検討の過程において,Prof.Oliver Bimberらと共同で本研究のベースとなっているプロジェクタカメラによる見かけの強調技術の光学顕微鏡への応用を行い,同軸光学系における見かけの制御に関する知見を得た.
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