本年度は、作業療法士や理学療法士等と意見交換を行い、昨年度開発した加速度データおよび操作ログを計測・記録する試作システムを発展させ、座位で作業を行う、その人に合った、正しい姿勢や入力機器の設定等を見つけ出して提供する「シーティング」における使用を前提とした計測・解析システムを開発した。本システムは、(1)最大6個の3軸加速度センサと体格等に応じて調整可能な治具、(2)加速度計測ソフトウェア、(3)タッチパネルまたは押しボタン等の単一スイッチで操作するゲームと操作ログ記録ソフトウェア、(4)複数の身体部位を異なる角度から撮影する3台のビデオカメラ、(5)被験者の障害や作業療法士・理学療法士の行った介入等についての記録シートおよび(6)加速度、操作ログ、ビデオデータを同期して作業療法士や理学療法士に提示し、観察による評価との相関を調査する解析ソフトウェアで構成される。 作業療法・理学療法における異常筋緊張の亢進やその他の異常運動パターン(以下、不随意運動)の評価は相対的であり、シーティングによって不随意運動がどう変化したかを、複数の身体部位について細かく分析し、その時点での操作の速度や正確性のみならず、将来の二次障害の危険性も鑑みて総合的に判断する必要がある。そのため、前述の計測・解析システムを用いてシングルケーススタディを実施し、研究協力者の成長による変化や座位保持装置の差異による変化を把握できるか試みた。作業療法士や理学療法士の観察による評価と加速度の解析結果は良く一致しており、観察に頼っていたシーティングを支援する定量的な手法となる可能性がある。
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