研究概要 |
本研究では,音響バーチャルリアリティを実現するために,仮想的な音源を使用者に提示する聴覚ディスプレイシステムを,計算性能に比較的制限がある携帯機器において実装することを目的としている.従来のほとんどのシステムは,高性能な計算機や専用のDSPを用いて実装されているが,携帯機器の性能が比較的低いことや消費電力を考慮して,聴覚の性質に基づく計算量の低減及び汎用のプロセッサを用いた実装について検討を行ってきた. 前年度において,音源から鼓膜面までの音の伝搬特性である頭部伝達関数を,任意の音源信号に畳み込むことで仮想音源を実現するために,一般の個人用計算機(以下PC)に用いられる描画用のプロセッサであるGPU (graphics processing unit)を用いて実装した.さらに,仮想音源の移動も再現するため,任意の音源方向の頭部伝達関数を補間によって算出する処理も実装した.当該年度では,GPU上で並列処理を行う際,並列化された各処理の管理をGPUのアーキテクチャに合わせた実装をすることで,より高速に処理を行うことを可能とした.具体的には,前年度では7音源まで同時処理可能であったシステムが,22音源まで制御可能であることを示した。また,開発したシステムをノート型PCに移植し動作可能であることも示した。したがって,当初の目的である,可搬性のある聴覚ディスプレイシステムを実現することができたといえる.以上のシステムは,学会等で外部発表をするとともに,秋田県立大学でのオープンキャンパスや日本音響学会聴覚研究会において,デモンストレーションをすることで,本研究の成果を一般にも公開した.
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