本研究は、家庭環境で使用される家電製品などのインタラクティブ製品の製品評価が、どのような心理的構造によって行われるかを、長期的な変化に焦点を当、変化の特徴と影響要因の解明を試みた。研究では、特定の製品の購入者に対する追跡調査を行い、1カ月後、3カ月後、6カ月後のそれぞれの期間でアンケート調査を実施した。まず、影響要因を分析するため、2波のパネルデータを用いて、交差遅れ効果モデルによる分析を行った。その結果、ユーザの製品操作に対する自己効力感(家電操作に対する得意度の自己信念に類似)と、対象製品に対する製品関与(対象製品に対する知識・関心の程度)が、使用後の製品評価に強く影響していることが分かった。しかし、製品のネガティブな側面を「不満」として測定する項目では、両者の影響は認められなかった。つまり、製品の良さを測定する場合は、製品関与などユーザの事前の心理的要因が影響するが、不満は製品そのものの評価を把握できる可能性を示している。また、長期利用の間には評価されるポイントが徐々に変化し、使用後1カ月では「ユーザビリティ」の評価因子が、6カ月後では「使う喜び」の評価因子を感じるかどうかが評価の中心であることが示された。また「使う喜び」の評価は、ユーザの心理的要因である製品関与が強く影響していた。このような研究結果から、実利用環境における製品評価は、購入以前のユーザの心理的要因に評価が影響される側面と、長期にわたる使用により評価が変化していく側面の2つの側面から分析する必要があることが示された。今後、さらなる分析を行い長期利用のユーザモデルの構築が課題である。
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