研究概要 |
我々は,時々刻々と変化する状況を概略的に理解するため,言語化のプロセスを介さずに様々な情報を認知し,判断する.またインタフェースが人間に提示する情報は記憶容易性("パッ"と見てわかる)と把持容易性(忘れにくい)の両方を兼ね備える必要がある.特に,言語的に記憶することが困難な図形や情報の認知精度を向上させることは,様々な労働場面で有益である.本研究では非言語的な図形の瞬間的な認知に影響を及ぼす人間側の諸特性を明らかにした上で,非言語的な図形や情報を正確に認知するために必要な情報提示条件について実験的に検討し,得られた知見を基に,適切な情報提示方法を提案することを目的とした. 平成22年度の研究では,平成21年度の研究成果を踏まえ,言語的に記憶することが困難な図形の生成方法と提示時間とを統制した実験で得られた異同判断時の正答率,反応時間,眼球運動軌跡データを基に図形の瞬間認知モデルの構築をおこなった.モデル生成過程での検討より,瞬間的に提示された図形を記憶する際の注視点周辺部に存在する特徴点の「個数」が図形の再認成績に影響する可能性が示唆された.図形上に存在する特徴点の「形状」ではなく,「個数」の影響が強かったことから,言語的に記憶することが困難な図形の記憶精度はWorking Memoryの容量との関連が強い可能性が考察された.加えて.図形の瞬間認知に影響を及ぼす個人特性計測システムを用いて,画面上で周期的に運動するターゲットの運動特性が平衡機能に及ぼす影響について検討した.結果,注視画面上「左上→右下→左上」と往復運動する刺激を追従眼球運動した場合,自覚的な平衡感覚は正常であるものの,他覚的な平衡感覚は混乱し,2次元平面に射影した重心運動の解析から,平衡維持のためにおこる姿勢反射の機構が異なる可能性が示唆された.
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