研究概要 |
我々は,時々刻々と変化する状況を概略的に理解するため,言語化のプロセスを介さずに様々な情報を認知し,判断する.特に,インタフェース上に提示される概略情報は記憶容易性と把持容易性の両方を兼ね備えている必要がある.本研究では非言語的な図形(無意味輪郭図形)の瞬間的な認知に影響を及ぼす人間側の諸特性を明らかにし,非言語的な図形や情報を正確に認知するために必要な情報提示条件について実験的に検討し,得られた知見を基に,適切な情報提示方法を提案することを目的とした. 平成23年度は無意味輪郭図形の記憶-再認特性について検討した.記憶容易性の変数は図形の凹凸数,図形の空間周波数,眼球運動パラメータとし,把持容易性の変数は記憶図形と再認図形との間のズレ率,再認図形の提示個数,把持時間とした.異同判断精度は正答率,反応時間,エラー率を用いて評価した.無意味輪郭図形の瞬間認知モデルより,記憶容易性に影響を及ぼす要因は,図形記憶時の注視点近傍に存在する特徴の数であり,把持容易性に影響を及ぼす要因は把持時間である可能性が示唆された.また,瞬間的に認知された図形の記憶精度を再認図形の提示個数を変化させた上で検討した結果,再認図形が4個までは90%以上の高い確率で異同判断を行うことができた.また,被験者の個人特性(視力,調節力,動体視力,コントラスト感度視力:矯正視力が1.0以上で,視機能において日常生活を送る上で支障のない被験者)が無意味輪郭図形の瞬間認知に及ぼす影響は若年者では軽微であった. 以上の検討より,非言語的な図形の瞬間的な認知に影響を及ぼす情報提示条件として考慮すべき変数は,記憶図形の把持時間と記憶時の注視点近傍に存在する特徴の数,記憶図形と再認図形のズレ率であることが示唆された.
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