研究概要 |
本研究課題の目的は,生体影響の少ない安心・安全な複合現実感機器の開発を通じて,実環境指向型の複合現実感枝術における情報提示方法の可能性を広げ,実社会への導入を目指すことである. 研究の初年度は,具体的な応用環境として,HUD(Head-up display)を用いたシースルー型の複合現実感ディスプレイからなる運転支援技術を対象に,実用化に向けた課題の把握と生体影響評価指標の改良を行った.はじめに,振動や揺れのある実環境を想定し,0.1から1.0Hzまでのピッチ方向の正弦波振動を身体に加えることで,複合現実感ディスプレイの視認性評価を実施した.ディスプレイに映し出される映像の遅延時間に着目した生体影響評価実験を行うことを目的に,他のディスプレイ設計要素による影響の有無を確認したところ,映像の解像度や結像位置(実像との一致度)が生体影響の大きさに影響を与える可能性が示唆された.これらの要素は、複合現実感映像の見やすさや錯誤の低減だけでなく提示コンテンツの可能性を広げる要素として、今後の複合現実感機器全般の発展に関わる重要な要素であることから,その改良を行い,複合現実感映像の質の向上を行った.これにより,生体影響評価を行う上で十分な映像条件を備えた実用性の高い評価システムを構築した. 同時に,生体影響評価方法の改良を進めた.これまで,自覚的疲労(主観疲労アンケート),自律神経系(呼吸や発汗),平衡機能系(重心動揺),視機能系(眼の調節応答速度)の指標を用いて,多角的な生体影響評価を行ってきた、本研究では,さらに,これらの評価方法に基づき,生体影響の要因やそれを軽減させる方法を探究する予定である.特に,映像提示を目的とした複合現実感システムでは,映像への集中度とそれに伴う認知負荷の程度を把握することは,生体影響の起因に深く関わると考えられる映像空間への没入度やその制御策を検討する上で重要な要素である.ここでは,瞬目情報を用いることにより,簡便に,視覚作業中の認知負荷の程度を評価する方法を検討した.
|