研究課題
本研究ではこれまでに、運転支援のためのHUD型複合現実感ディスプレイを取り上げ、振動や揺れのある実環境での実用化に向けた課題として、ディスプレイの映像遅延時間の変化に着目した生体影響評価を進めてきた。研究の次年度は、安心安全な複合現実感技術の様々な分野への応用可能性を探ると同時に、実用化へ向けたもう一つの課題として重要な、様々な身体機能を有するユーザに対して利用可能な技術となることを目指し、より柔軟性の高い複合現実感技術としての課題評価を行った。ここでは特に、これまでの研究経過から見えてきた、乗り物酔い感受性と生体影響の度合いの関係に焦点を絞り評価を遂行した。はじめに、研究対象者の乗り物酔い感受性の高低を見極めるため、従来研究を参考に、82名(平均年齢21.5±4.1歳)へのアンケート調査を実施し、乗り物酔い感受性スコアの全体分布を算出した。次に、全体分布の上位40~20%に位置する、乗り物酔い感受性が比較的高いと考えられる集団のスコア範囲に位置する被験者3名を選別し、運転支援のための複合現実感ディスプレイを用いて、400cm前方のスクリーン上の2Dドライビングゲームを10分間行い生体影響を評価した。その結果、自覚的疲労に関する主観評価からは、甚大な生体影響が生じていないことが確認できた。一方、平衡機能系や自律神経系の生理指標については、一部の条件下(加振周波数や映像遅延時間)において、平衡機能の不安定化や呼吸数や発汗量の増加などの生体影響がやや見られたが、いずれも再現性の高い程度に大きな変化は生じなかった。以上のことから、比較的乗り物酔い感受性の高い人であっても主観的には問題を感じておらず、また、生理的指標においても、条件によってはやや増加するものの大きな影響がある程ではないことから、本複合現実感システムの10分間の使用の範疇においては、多くの人々にとって利用可能なディスプレイとなる可能性を確認できた。
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運動療法と物理療法(The Journal of physical medicine)
巻: 22巻1号 ページ: 93-99
Special Issue : World Stroke Congress 2010, 13-16 October 2010, Seoul, Republic of Korea, International Journal of Stroke
巻: Vol.5, Issue Suppl.s2 ページ: 308