研究概要 |
本年度は,3年間の研究期間の最終年度であり,昨年度までに得られた情報環境への自己投射による身体動揺の現象の知見を踏まえながら,情報提示装置の特性を考慮してコンテンツと身体動揺との関係を探ることを目標として研究を推進した.情報環境で操作者の分身となるアバターを操作している場合,インタフェースに習熟していないユーザーでは,コントローラへの操作入力を行うに留まらず,情報環境のアバターを動かしたい方向へ実環境の自らの身体を動かすという現象が観察できる.この現象は特に自己投射性の高い情報環境で,操作者がアプリケーションに没頭していている状況において顕著に観察されると考えられる.今年度は,昨年度までに整備した被験者の頭部にモーションキャプチャ装置用の位置・姿勢の計測対象となる再帰性反射材マーカーを装着することで操作中の頭部運動の計測を可能とした実験環境を用いて,異なった情報提示手法を用いたコンテンツにおいての被験者の動揺を観察した.昨年度までと同様に大型スクリーンでのコンテンツ提示を行うと共に,携帯型情報端末のコンテンツを体験する被験者の観察を行った.いずれの環境においても熟達した被験者では,大きな動揺が観察されることは少なかった.一方で,若年の未習熟な被験者においては視野角の狭さから視覚誘導性の自己運動感覚に起因する身体動揺への影響が小さいと考えられる携帯型情報端末を用いた環境でも身体動揺が観察できることを確認した.
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