本研究の学術的興味は、視覚障害者特有のタッチパネル利用方法とそれを用いた図形認識方法の特徴を調査することと、タッチパネルと音を用いたシンプルな方法で視覚障害者の図形認識を助ける方法を実現することにある。これらの達成のための研究は完全に個別に進展するのではなく、解明された特性を図形提示方法の開発に生かし、また図形提示方法によって新たに特性が解明される、というふうに相互に影響し合いながら進展すべきで、H21年度は以下の2つのサブテーマを同時進行で実施した。 <Sub-1>視覚障害者のタッチパネルを利用した図形認知特性の調査研究 全盲もしくは全盲に近い重度視覚障害者10名を、点字習熟度の上級・中級・初級にグループ分けし、図形認識実験を行った。その結果、点字習熟度が指の動かし方に強い影響を与えること、我々の提案する図形提示方法が初級者にも有効であること、が分析を通して示された。本研究成果は国際会議2件、国内の研究会1件で発表された。また、現在、英語論文誌に1件投稿済・現在照会中、国際会議1件投稿済・現在査読中である。 <Sub-2>タッチパネルと音とによるインタラクティブ図形提示方法の提案と評価研究 地図コンテンツをタッチパネルを用いて視覚障害者に提供するための音声補助付き画面スクロール機能を実装し、全盲もしくは全盲に近い重度視覚障害者11名の地図認識実験を行った。その結果、スクロールや画面の切り替えを含んだ複雑なコンテンツであっても、経路を周囲の建物や目印の空間配置とともに理解し、再現できる被験者がいることが確認され、研究の新しい端緒を開くことができた。
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