2009年度の研究実施計画においては、1)社会心理学におけるこれまでの知見をどのように適用するか2)モチベーション維持のためにどのようなインセンティブをユーザに与えるべきか3)医療等の現場で利用出来るかについて検討する旨記した。 1)2)に関しては海外の研究者との議論を行うにつれ、集団主義的な社会と個人主義的な社会において大きく異なることが強く示唆された。そのため、個人主義的な文化の強いオランダにおいても研究協力者を募り、評価実験を行った。この評価実験は2010年3月に終了し、現在はその実験データを精査中である。日本は比較的集団主義的な文化を有するため、日本における実験と比較をすることでより網羅的な結論を導き出せるはずである。この件に関してさらなる議論をするため、2010年5月より2ヶ月間オランダより研究生を招き、深い議論および実験デザインを進めていく。Persuasive Technologyは今後センシング技術を利用したキラーアプリケーションになると考えられるが、このことから得られる知見は、国際化が進む中で国際競争力のあるアプリケーションを多面的に展開する際に非常に有用になると考えられる。 3)に関しては実際の評価アプリケーションの作成には至っていないものの、認知症を専門とする研究者へのヒアリングを実施した。2010年度にはフィールド実験を行うことを予定している。 これまでコンテクスト取得のために利用したセンシング技術は、加速度センサ・温度センサ・照度センサ・電圧センサなど多岐にわたる。一方で、実際に一般家庭にてプロトタイプ実験を行う際に問題になることは、それら技術の洗練度だけでなく、家庭内にセンサが置かれることへの違和感が大きいことであった。研究実施計画の通り、2010年度はこれら2009年度に得られた知見をもとに新たな実験をデザインし、実施する予定である。
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