研究概要 |
ダイエットや省エネルギー活動など,いくら技術が進歩しても人間の行動並びに意識が変わらなければ根本的な解決は難しい問題は存在する.例えばダイエットであればいくら効果的なトレーニング手法が開発されたとしても,規則正しくそれを行わなければ意味はないし,省エネルギーに関しても電気機器の進歩だけでは限界がある.本研究の目的は,これらの問題に対して,ユビキタスコンピューティングの分野で培われたコンテクストアウェアネス(センサ等を利用して人間や周辺環境の状況を類推する)技術を用いて,ユーザの状況に合わせながら行動の改善を促す「説得」システムを構築することである. 昨年度行なった研究の成果から,とりわけ二酸化炭素排出削減などといった共有財に対しての説得に関しては,アプリケーションの設計に社会心理学の知見を用いることが効果的であることが分かってきた(一方ダイエットなど自身の利益に関する説得に関しては,目標設定理論などが活用できる).そこで本年度は,集団主義的社会と言われる我が国と,個人主義的と言われるオランダにおいて説得システムの比較実験を行い,これらの知見が実際に効果を上げるかを調査した.結果,二酸化炭素排出量削減を促すアプリケーションにおいて,オランダでは個人間の競争を促すようなフィードバックが効果があり,日本では他者との協調を促すようなフィードバックに効果があることが分かり,統計的にも有意な差が見られた. 今後はコンピュータが単なる道具ではなく,生活の質を向上させるために用いられる例が増えてくるだろうと考えられる.その際に,いったいユーザに対してどのような働きかけをすれば良いのかという知見をまとめることは意味があることと考える.またこれらの働きかけのうち,文化に依存するものとしないものを区別することは,アプリケーションの国際化対応などする際にも役立つと考えられる.
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