本研究では、従来のメカニズムデザイン研究では電子オークションにおいて結託した不正者の発見が困難であるという現状を鑑み、新規に不正者を発見し市場から排除できる電子商取引メカニズムを開発した。従来の多くの手法では経済理論のみに着目しているのに対して、本研究では経済理論と入札データの両方を用い、不自然な入札値を発見するとともに、不正入札者の効用が増加しない電子商取引メカニズムを考案した。特に、電子商取引の取引後に行われる取引者評価に関するメカニズムに関しても、新規に情報の非対称性と不完全性をできるだけ除外するメカニズムを開発し、評価を行い、一連の研究のまとめとした。具体的に、(1)電子商取引における取引者評価において、その評価メカニズムをうまく定義しておくことで、買い手にとって非対称情報や不完全情報による不利益を被り難くすることが可能となる。特に、ディスクローズする評価項目数とその内容についての評価を計算する計算式において、パラメータの変化により、売り手の取引成立率も増加する。そこで、パラメータの変化が売り手の収益にどのように影響するかを分析した。(2)実際は大人数の買い手がそれぞれの取引における体験に関する知識を提供していることと同じである。これらの知識は集合知と呼ばれることある。これまで電子商取引メカニズム設計において集合知の利用は考慮されてきていないため、集合知の利用と電子商取引メカニズム設計において考察し、特徴をまとめた。また、通常の物財取引ではなく、旅行者へのホテル予約などに関するサイトにおける応用も実現した。
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