研究概要 |
マルチエージェントによる都市交通のシミュレーションのための,シミュレーション実行環境の構築,およびモデルの組み込みを行った. ・多層型マルチエージェントシミュレーションプラットフォームの構築 都市交通は多様な要素から構成されている.シミュレーションの構成論として,全要素を内包するシミュレータを一度に構築するのではなく,要素を逐次投入し,その要素の影響を確認しながらシミュレータを充実させる方針を採る.ところで,再生可能エネルギー利用の出口としての電気自動車(EV)が,環境志向の社会状況下で注目を集めている.このような背景から,EVによる都市交通流,およびEVによる電力流通という異なる社会システムの動態を模擬するため,シミュレーションプラットフォームの再設計と構築を行った.本プラットフォームは,異なる社会システムを模擬する個々のシミュレーションを展開する複数のレイヤーの合成によって都市のシミュレーションを実現する,多層型のアーキテクチャに基づいて実現した. ・車載電力流通シミュレーションの実施と検証 EVは普及段階に入ってきており,2030年における国内普及目標は20~30%にのぼると予想されている.一方,太陽光発電(PV)についても,2010年代にGridParityを迎えるという予想から,普及の加速が予想される。両者を繋ぐ考え方としてVehicle-to-grid(V2G)が支持されつつある.V2Gは,EVの車載バッテリへの蓄電によるピークカット等を目的として設定される事が多いが,本研究では,V2GによるPV電力の社会への引き込み,流通を実現する仕組みとして車載電力流通を構想し,シミュレーションによる検証を試みた.新たなデバイスの登場,社会システムの導入による社会の動態変化や,具体的な効果を,個々人の行動を起点として計算,一分析することを可能とした.
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