研究概要 |
近年,新たなエネルギー源とその社会導入の方法が世界中で模索されており,例えば,エネルギーと交通のシステムに関する検討は,これからの社会をデザインする上で不可欠と考えられる.本研究では,EV(Electronic Vehicle:電気自動車)によるPV電力(Photo-Voltaic電力:太陽光電力)の都市内流通を分析するマルチエージェントシミュレーションを行い,既存の異種システムを統合した新たな社会システムのベストデザインの計算を試みた.ここでの課題は,個々のエージェントが,交通においては日々の状況に基づいて交通行動を変化させ,電力流通においては交通行動の変化に応じて電力流通への貢献を変化させる事による,システム挙動の複雑さへの対処方法にある.そこで,近似解法のプロセスに則ったシステムデザインの漸次的な更新と,各デザイン下でのエージェントシミュレーションによる創発現象の生成と評価を繰り返し,準最適解を得るアプローチを試みた.すなわち,群集の振る舞いを指標とした社会デザイン改善の計算をマルチエージェントシミュレーションを基盤として実現する手法を提案した. 前年度までに開発したマルチエージェントに基づく車載電力流通シミュレーション環境を利用し,近似解法として遺伝的アルゴリズムを用いた,未知の社会システムデザインの計算プロセスを明らかにし,システムデザインに対する太陽光エネルギーの逆潮流用の変動を検証する実験を行った.実験の結果,逆潮流量を抑制(つまり社会的コストを低減)するシステムデザインの計算が可能である事を示した.一方で,巨大な解空間に対する求解の困難も明らかとなり,さらなる研究の必要性が確認された.
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