研究概要 |
本研究では,音声対話システムにおけるユーザの発話行動の経時的変化を分析し,ユーザの音声対話システムへの習熟過程のモデル化を目指す.これをユーザに適応したインタラクションの基礎技術となる.具体的には,一般に公開していた京都市バス運行情報案内システムにより収集されたデータに対する分析とモデル化を行う.平成21年度は以下の各点について検証を行い成果を得た. (1) 実ユーザの発話行動の時系列的な分析 音声認識率,タスク達成率,バージイン率などを各個人ごとに算出し,その時系列変化を分析した.ここでは記録されていた電話番号を一ユーザとみなした.これは電話番号の多くが携帯電話のものであったことから妥当な仮定である.これにより,各ユーザの発話行動の時系列的な変化の有無やその度合,大きさなどを定量的に検証した.これらはユーザのシステムに対する習熟度合に対応するとみなすことができ,これに応じた応答生成や発話の取捨選択などに活用できる. (2) 各時系列データ間の依存関係の分析とモデル化 上記で示したユーザの発話行動の各指標間の関係を分析した.この結果,音声認識率とタスク達成率はほぼ同時に向上することや,音声認識率とバージイン率では後者が遅れて向上することを定量的に確認した.これはWalkerら(1997)による音声対話システムの評価指標(PARADISE)における,ユーザからの評価に有用な順に対応する.この結果,実際の一般ユーザの習熟過程で同様の傾向が見られることがデータから実験的に示されるという興味深い結果が得られた.
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