研究概要 |
災害救助シミュレーションにおいてマルチエージェントシステムが行動する環境の要因である地図の構造を分析するため,地図の中でも道路に着目し研究を行っている.前年度までに道路を有向グラフとみなすことで,道路ネットワークを定義している.また,本年度はその道路ネットワークに加えて建物の情報も利用した.なぜならば,シミュレーションの防災戦略の結果は,建物の密集度や道路の接続状況に大きく依存すると考えられるからである.そこで,建物および道路に関する特徴を数値化し,地図の特徴の指標を定義した.この定義に関して,災害救助活動において影響を与えると考えられる特徴を建築面積建物の要素,建物と建物の位置関係,道路と建物の位置関係,密度の5種類にわけ,建物と道路に関する地図の特徴を16項目定義し,数値化した.そして,シミュレーションにおけるエージェントの評価との関係について統計分析をおこなった.これにより,災害救助エージェントの環境である地図データの依存関係を分析し考察をした. この結果から,定義した指標とシミュレーションシステムにおける災害救助エージェントの間に依存関係があることが示せた.また指標と震災シミュレーションとの依存関係は,シミュレーションで動作するエージェントアルゴリズムによって異なることも示した.さらに地図の特徴の指標と震災シミュレーションとの依存関係から,そのエージェントアルゴリズムの特徴を推測できることが判明した.そして,今後研究が進めば,地図の環境に応じた適切,もしくはそれに近いエージェントの配置や割り当てが容易になると考えられる. これらの研究成果を査読付きの国際学会などで発表を行った.
|