研究概要 |
本研究は小売サービスの現場で観測される大規模な購買履歴データと熟練サービス従事者の経験を統合した計算モデルを構築することを目的としている。ここでは小売サービスの中でもデパートを対象に研究を推進した。初年度では、デパートの購買履歴データである大規模なID-POSデータ(1年間分の約3,000,000件の購買履歴情報)を取得した。このデータを用いて顧客行動の計算モデル化を行うために顧客と商品のセグメント化を確率的な潜在クラス分析法を導入することで実行した。このセグメント化技術では適度に購買・被購買パターンの情報を保持したまま、顧客と商品の分類を自動的に発見できることを確認した。また、サービス従事者の経験として天気や曜日などの状況依存性を考慮するための情報も計算モデル化のための変数として利用した。顧客のデモグラフィック属性、顧客と商品の自動セグメント、状況依存的変数からその確率的構造をベイジアンネットワークにより計算モデル化し、その構造から顧客行動に関する知見の抽出を行った。また、推定されたベイジアンネットワークの構造から、購買行動は状況依存的変数から大きな影響を受けることが分かった。以上の研究成果はデパート以外の小売サービス業で観測・保存されているID・POSデータに対しても水平展開や発展的応用が可能な技術である。本研究の成果は平成21年度データ解析コンペティション日本マーケティングサイエンス学会ID付きPOSデータ活用部会において発表し優勝を獲得した。
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