研究概要 |
本研究では,自律分散的な進化的手法を用いて,IPネットワークのルーティングを最適化するアルゴリズムの構築を目標としている.特に以下の3つの特徴を持つ最適化アルゴリズムを目指している. 【特徴A】最適化性能がスケールフリーである(ネットワークの規模に依存しない最適化). 【特徴B】部分最適ではなく全体最適を実現する(ネットワーク全体にとっての最適化). 【特徴C】負荷分散のみならず機能分散を実現する(サービスの優先順位に応じた最適化). 平成21年度は,これらの有効性をシミュレータ上で明らかにするために,まず特徴Aと特徴Bに関連して,それぞれ以下の課題Aと課題Bに取り組んだ. 【課題A】提案手法における最適化性能のスケールフリー性を確認するため,10万台のルータ/端末と数億のパケットを同時に計算できるシミュレータ用のコンピュータを購入した.これにより,ネットワークの規模に影響されない最適化性能を検証できる環境を構築した. 【課題B】全体最適な経路と部分最適な経路が異なる状態(ジレンマ状態)であるIPネットワークを,マルチエージェントシミュレーションにより再現し,その最適化手法について検証した,IPネットワークのような個体間の関係をトポロジカルに表現する環境において,ジレンマ状態であっても,全体最適を得るアルゴリズムを明らかにした.具体的には,狭い相互作用範囲と広い選択範囲を用いる進化的最適化手法により,全体最適な解を得る可能性を示した.
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