研究概要 |
本年度はまず,高周波振動にAM変調をかけた際の知覚特性について,詳細に検証を行った.実際には,心理物理実験によりAM変調振動が知覚される条件を特定し,その際の皮膚の変形を計測した.その結果,これまでに想定していたように,変形の2乗に感度を持つのでは無いことが発見された.これは,印加する2つの高周波振動が2倍の高調波の関係を持つ場合に,感度が急激に低下することにより示された.2乗に感度を持つと仮定した場合には,このような振動波形を知覚できることが説明できない.2乗ではない別の非線形性が生じていることが示唆される.これは従来検証されていなかった発見であり,触知覚に新たな知見を加えることができた. この実験の過程において,AMのみならず,高周波のFM変調振動でも同様に知覚が生じることが発見された.この特性は,これまで誰にも言及されておらず,新たな発見である.この特性を示す部分の機序は,来年度以降の課題となっている. 生理学的な触知覚の解明と並行して,振動知覚を利用したアプリケーションの提案も行った.二次元通信という技術を利用することで,2次元的なシート上の任意の位置に,振動を提示可能となった.今回提案した手法では,まだAM変調振動の知見を利用していないが,今後,AM変調振動を利用した触覚ディスプレイ実現のための,一つのアプローチとなる. また,指先の振動を計測するシステムの開発も行った.爪部にセンサを貼付することで,指下の振動を検出し接触対象を識別する.これは,実用的なアプリケーションとしての提案であるが,それと同時に,指先の振動を簡便に,安定して取得することを可能とするものである.したがって,AM変調振動の知覚特性実験における,指先振動の測定手法としての応用も考えている.
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