研究概要 |
ヒトの触覚が得意とする「つるつる・ざらざら」といった数μmの微小な凹凸のセンシングや,物体把持のときに重要と考えられる微小な初期滑りのセンシングなど,ヒトの触覚の高機能・高感度な触感覚認識機構を解明し,その認識機構の仕組みをカーボンマイクロコイル(CMC)を用いた触覚センサのセンサ素子の設計・開発に役立て,ヒトの触覚の触覚認識機構を模倣した高機能・高感度な触覚センサを開発することを本研究の目的とする.本研究では,心理物理実験法によるヒトの触覚の触感覚認識機構の解明,力覚センサとCMCセンサ素子を組み合わせたハイブリッド触覚センサの開発,およびCMCセンサ素子における数μmから数十μmの微小な機械的変形に対する応答特性の評価を行った.これら一連の研究により,ヒトの触感覚認識機構を模倣した高機能・高感度なハイブリッド触覚センサシステムを開発した. 本研究ではまず,CMC触覚センサと力覚センサを組み合わせたハイブリッド触覚センサシステムを提案・開発した.本システムにおけるCMCセンサ素子の圧覚特性を明らかにして,力覚センサとCMC触覚センサの両センサの出力信号を用いてCMCセンサ素子に与えられた数μmの微小変形量を推定する手法を開発した.またハイブリッド触覚センサシステムの圧覚・滑り覚特性などを定量的に評価する装置を開発した.つぎにヒトの触感覚認識機構については,指先の指紋の模様に着目して,「ヒトの指の指紋の模様が段差弁別に影響を与える」という仮説を立て,心理物理実験を行った.実験では,指の先端部と指腹部に対して呈示方向の異なる10μm程度の微小段差を呈示して,ヒトの指先の弁別能力を調べた.その結果,微小な段差をヒトの指の指紋の縞模様にひっかかるように呈示すると弁別閾が最も小さくなり,指の指紋の模様が段差弁別に影響を与えることが示唆された.
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