研究概要 |
本研究は表現力豊かな歌唱音声合成手法の探求を目的として、与えられた楽譜から自動的に歌声を合成する用途だけでなく、コンテンツ制作支援という側面においても寄与するものである。これまでに提案した隠れマルコフモデル(Hidden Markov Models, HMM)に基づいた歌唱音声合成システムでは、一般的な素片接続方式の合成方式とは本質的に異なり、歌唱音声における音の高さ、音色・大きさ、時間構造の変化を確率的な枠組みでモデル化したものであり、本研究における研究課題は様々な歌唱表現を実現する歌唱変換手法、加工性に富んだ合成手法の開発と、歌唱音声データの収録と整備である。 今年度は、歌唱の多様性に関して主に二つの課題について取り組んだ。1つめの成果としては、歌唱合成において既存の日本語用の音響モデルを用いた英語歌唱合成を試み、多様化における課題の一つである多言語への拡張を検討した。二つ目の成果として、データベースの整備があげられる。これまでに作成した歌唱データベースの仕様を再検討し、音域や音韻バランス、著作権上の問題の回避などを考慮しながら予備的なデータ収集を実施し、統計学習に利用可能なレベルの1時間規模の高品質な女性歌唱者1名からなる歌唱データ収録を実施した。
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