研究概要 |
本研究の目的は,全方位内視鏡を用いて,死角の無い映像(=全天球視野)を表示する方法を開発することである.全方位内視鏡は前方,後方の両方の視野が得られるが,凸面鏡の裏側などに観察できない死角が存在する.死角部分の映像を前後の映像から推定することによって,死角のない全天球視野を持つ映像を生成する.すなわち,時系列的に得られた複数の画像から全天球視野を生成することになる.複数の画像から全天球視野画像を生成する際,死角部分境界に画像の不連続などの誤差が発生することが多い.そこで撮影した腸管の形状を得ることによって,そのような誤差を少なくすることを目指す.本年度は,2つのアプローチで腸管の形状を取得する方法について研究を行った.第1の方法は,腸管映像内の特徴点を時系列的に追跡することによって,カメラの動きと腸管形状を復元する方法である.第2の方法は,パターン光を投影する光源を内視鏡先端に取り付け,そのパターン光を内視鏡のカメラで観測することによって形状を得る方法である.第1の方法について,腸管画像において襞の連続性を利用して襞を強調した後,その襞の上の特徴点を検出し,特徴点を中心として襞を挟むようにセルを配置したHOG特徴量を用いて対応づけを行う手法を提案した.この提案手法について,国内会議における研究発表および投稿論文において誌上発表を行った.第2の方法について,内視鏡先端に取り付けられる小さな光源を開発するため,内視鏡先端に取り付け可能な小さなレンズと,レンズ投影面に収まる微細なパターンを用いて,パターン投影が可能かについて予備実験を行い,このアプローチが可能であることを確かめた.今後このアプローチを実現する実験システムを構築する予定である.
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