研究概要 |
CGにより現実感の高い映像コンテンツを生成するためには対象シーンに存在する物体に関する精密なモデル(形状および反射特性)を要する.本研究では,汎用のデジタルカメラを用いた観察に基づき実在物体のモデルを自動構築する技術を開発を進めている.平成21年度は,人間の知覚特性に関する先行研究を調査し,現実世界において私たちが「材質」を感じるために観察が必要なモデルのスケール(色や輝度に関する分解能と範囲)について調査した.また,実在物体自体が持つ色の分解能に関する統計量を調査し,この統計量に基づき物体色を正確にモデル化する手法を開発した.近年,照明のスペクトル分布を変化させることで物体の分光反射率(各波長に対する反射率であり,物体色を決定する)を推定する手法が提案されてきている.しかしながら,分光反射率の推定精度を高めるために,どのような分光パターンを持つ光源を何セット準備すれば良いのかということは,十分に検討されてこなかった.本研究では,一般的な物体の分光反射率の統計量に基づき物体の分光反射率推定に必要な波長のサンプリング間隔を明らかにし,サンプリング理論に基づき物体の分光反射率を推定する手法を提案した.さらに,提案する波長多重光源の利用により各波長に対応する画像を安定に獲得できることを示した.本研究で提案する波長多重光源下において,モノクロカメラを用いて実在シーンの明るさを観察することにより,高い精度で実物体の分光反射率特性を推定できることを確認した.
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