研究概要 |
今年度は1年目の成果に解剖学的及び生理学的な知識を統合し、各運動プリミティブ間の筋活動パターンから「運動プリミティブの滑らかな組み合わせ」に対する脳内のメカニズムを運動指令レベルから明らかにし、「単純な運動指令の滑らかな組み合わせ」で様々な新しい運動が生成できる手首運動制御モデルを作ることを目指した。特に我々は単純な軌道と速度をもつ運動プリミティブに基づいた手首運動の生成モデルを構築するために、一定な軌道と速度をもつ指標を追跡する手首運動を実験課題として行った。そして、様々な指標追跡手首運動において各運動プリミティブ間の筋活動パターンから「運動プリミティブの滑らかな組み合わせに対する脳内のメカニズム」を分析した。その結果、指標追跡運動には、指標との誤差を修正するフィードバック制御器と、指標の動きを予測するフィードフォワード制御器という2つの並列制御系が機能し、2つの制御器からの制御信号が混ぜ合わせられた運動指令(筋活動)によって追跡運動が行われていることを明らかにし、その研究成果を国際学会(Society of Neuroscienece 2010, Neuro2010など)に発表し、現在論文も投稿準備中である。さらにこの並列制御器に基づいた各運動プリミティブの特徴抽出方法が神経疾患による病態の解明や評価に役に立つことが認められ、国内および国際特許(国内特許:特願2010-042301、国際特許:12/807.861)を出願した。今後脳卒中のリハビリにおける機能回復過程を同様の手法で経時的に追跡し、脳卒中患者の機能回復過程を運動プリミティブ生成や回復の観点から評価することを試みる。
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